ふれっしゅのーと

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趣味に生きる30代エンジニアが心に移りゆくよしなし事をそこはかとなく書きつくるブログ

4度目の挑戦!漢検1級 R2-2 受検記 1/2

漢検1級 2020年度第2回(R2-2)を受検しました。初挑戦から数えて4回目の挑戦です!

新型コロナ感染症でR2-1が中止になったので前回の挑戦から8ヶ月ぐらい間があきました。まずは自粛期間に何をしていたかから振り返っていきます。

今回の挑戦までにやったこと

漢字逞筆をひたすら解く

漢検1級界隈で有名なサイトの1つです。問題一覧表をダウンロードして、かれこれ半年ぐらい解いてました。驚異のボリュームなので、これを何周もして記憶に定着させれば高得点合格間違いなしです!

初合格を目指す人は最高レベルの問題まで手を出す必要はないのですが、僕は未知の単語が面白くてついつい最高レベルまで解き進めてしまいました。結局時間を掛けすぎてしまい、どの単元も1周しかできなかったのが反省点です。

東大王の漢字オセロを毎週見る

超難問のクイズを楽しみながら熟字訓対策もできて一石二鳥(1級風に言えば一箭双雕)です。「萵苣」を「レタス」と読むなど、クイズ番組と漢検で読みが異なることもあるので注意は必要ですが。

漢字音符字典を読み返す

1年ぶりに読みました。ある程度実力がついてから読むと、また新たな気付きがあって面白いですね。

どの音符にも分類できなかった漢字たちは "外" という章にまとめられているのですが、なかなか覚えられない変な音読みの漢字たち(「薊(ケイ)」「孑(ケツ)」「耜(シ)」「誄(ルイ)」「丐(カイ)」など)がこの章に勢揃いしていて笑いました。やっぱり仲間のいない変わり者たちだったんですね。大問一で出題されがちなのでコピーして壁に貼っておきました。

漢検漢字辞典を総浚いする

漢検1級のバイブルといえば、漢検漢字辞典です。

漢検漢字辞典を独力で全部読むのは大変だなーと思っていたところ、たまたま漢検漢字辞典の内容を総浚いする素晴らしいブログ記事に出会いました。

ら行の7938 漢検1級ブログ ボクちゃん日記PART2(漢検一級編)

9月から読み始めたのですが、想像以上に凄まじいボリュームがあり、読み終わるまでに結局1ヶ月近く掛かりました。小見出し語も含めて満遍なく勉強することができるので、時間に余裕があるときに目を通すとよいと思います。僕は「へぇ〜こんな熟語があるのか」と楽しみながら、1割ぐらい記憶に残っていればラッキー程度で読み流しました。筆者のセンスが光る独特な例文も醍醐味です(人名ネタは世代が違ってよくわかりませんでしたが)

精選演習を解く(今更)

本棚で新品のまま眠っていた『漢検1級分野別精選演習』(3年前に購入)についに手を付けました。

8月ぐらいに「そろそろ模試を解きたいな」と思ったのですが、国立国会図書館から取り寄せた過去問をがっつり解き直す時間はありません。育児の傍ら手軽にできる過去問はないかと考えたところ「過去問を精選した問題集を持ってるじゃないか!」と思い至りました。確か平成15年〜平成22年の過去問から精選してるはずです。平成28年の難化前の問題ということもあり、さくっと復習できました。

直前対策(悪あがき)

本番1週間前:多字問題

最近「臘八会」「阿僧祇」など三字熟語がよく出題されているので、模擬試験倉庫で多字問題を特訓しておきました。

さらに「北叟笑む」「人熱れ」のような書き問題の対策として、二字以上の漢字+ひらがなの問題も解いておきました。

本番1週間前〜本番前日:四字熟語

原点に返って1級配当の四字熟語を復習しました。前回の振り返りにも書きましたが、やはり基本問題を取りこぼさないことが肝腎です。コスパの悪い常用四字熟語の対策は捨て、1級配当の四字熟語だけに専念しました。

本番当日:大見出し語表・国字・熟字訓

  • 6:00-9:00 大見出し語表 1周目
  • 9:00-9:30 国字
  • 9:30-12:00 熟字訓
  • 会場に向かいながら大見出し語表2周目

当日の朝に焦って大見出し語表の暗記を始めた1級チャレンジャーは恐らく僕ぐらいでしょうね。平日に勉強時間をあまり取れなかったので、なんだかんだで当日になってしまいました(猛省)

漢検1級模擬試験倉庫さんの大見出し語表 とasatori漢検勉強記録さんの大見出し語表書き問題をマージして作った、大見出し語一覧表が今回も役立ちました。

幸い前回以前にも大見出し語表の暗記をしていたこともあり、当日朝でもなんとか間に合いました。検定会場の待合室で2周目が終わったので、かなりギリギリでしたが…

熟字訓は漢検漢字辞典巻末の全21ページ分にざっと目を通しました。流石に全暗記は不可能なので、ある程度ヤマを張り、それ以外は捨てました。

  • 過去問で見たことがある熟字訓の復習
  • 知ってる動植物に目を通す(イメージできて比較的覚えやすい)
  • 漢字四文字の熟字訓(漢検協会が好きそうなので)

よく知らない動植物はイメージしづらいので「海州常山 → 海の中に常に山があると木が腐る → 腐る木 → くさぎ」のような強引なストーリー暗記で記憶に残しました。

決して万全の準備とは言えませんが、土壇場でやれるだけのことはやりました。乾坤一擲。あとは野となれ山となれ。

更新履歴

  • 2022-11-11:漢字音符字典のリンクを改訂新版に変更

見つけた 戦前のマンホール!逓信省からNTTへ

南草津の橋梁についてネットであれこれ調べていたら、『穴と橋とあれやらこれやら』さんの「北川に架かる謎のコンクリートアーチ (滋賀県草津市野路)」という記事に辿り着きました。近所の小川にある謎のコンクリートアーチが気になった著者が「さあ、コイツはなんなのか、わたくしに教えてくだされ!」と叡智を募っている記事です。

2016年に公開された記事ですが数年間未解決のままでした。答えが気になって仕方ないので、軽い気持ちでGoogleストリートビューで現地を確認してみたところ、僕は思わず息を呑みました。

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謎のコンクリートアーチ(2018年5月26日撮影)

コンクリートアーチも気になるのですが、注目すべきは手前のマンホールです!

タコの足のような独特の地紋…

中央に見える〒マーク…

も、もしかして、これは……

 

戦前のマンホール なのでは!!!?

 

そう直感したのには、理由があります。実は過去に京都大学の正門前で同じタイプのマンホールを見たことがあるのです。

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京都大学正門前の逓信省マンホール(2015年5月6日撮影)

地紋の楕円は中が詰まっており、先程のマンホールと細部は少し異なっていますが、全体の雰囲気は似てますよね。このマンホール、周囲に飾り石が使われている点からも古さが感じられるのですが、一番のポイントは中央の「話〒電」です。

郵便局でおなじみの「〒」マーク*1と「電話」という一見おかしな組み合わせ。かつて逓信省(ていしんしょう)が郵便事業と電信電話事業の両方を管轄していた時代のマンホールです。逓信省が郵政省と電信電話省に分離する、いわゆる「郵電分離」が起こったのは昭和24年なので、このマンホールはそれ以前のものだと言えます。「電話」が「話電」と右書きになっている点からも戦前*2を感じられますね。

ちなみに京都大学逓信省マンホールのすぐ南側には、吉田キャンパスの電話拠点である自動電話庁舎が建っています。関連施設だと考えてまず間違いないでしょう。

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自動電話庁舎(キャンパスマップに建物名が載ってなくて正式名称を調べるのが大変だった)  

さて、謎のコンクリートアーチに話を戻しましょう。ストリートビューを見て「これは激レアだぞ…!」と興奮した僕は、気がついたら南草津に向かってました。場所は野路町交差点の南東にある旧東海道です。

 

現地に着いて撮影したのが冒頭の写真です。マンホールは予想通り逓信省マンホールでした。まさか草津市内の住宅地に現存していたとはなあ。感激。

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滋賀県草津市野路に現存する逓信省マンホール

京大の逓信省マンホールは「電話」が手書き風の楷書でしたが、こちらはなかなか面白い字体です。篆書風の「話」が良い味出してますね。

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逓信省マンホールの文字拡大。「話」の字体がたまらなく愛おしい。

逓信省マンホールが現存してるというだけでも珍しいのですが、この場所にはなんと川を挟んで2基も残っているのです!おまけに謎のコンクリートアーチつき!なんだここは。サンクチュアリか!?

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他にも残ってないかと周りを見渡してみたら…

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おや?これは…

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電電公社マンホールだ!!

中央のマークは「電信電話」を表す「Telegraph and Telephone」の2つの「T」を象っています。よく見ると地紋も大量の「T」です。*3

逓信省の電信電話事業を戦後に引き継いだのが電電公社日本電信電話公社)で、現在のNTT(日本電信電話株式会社)です。電電公社マンホール自体はそんなにレアでもないんですが、逓信省マンホールのすぐ近くに残っていて、戦前・戦後の通信系マンホールの移り変わりを見ることができるという点で貴重です。

電電公社マンホールがあるということは…

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やっぱりあった!

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おなじみのNTTマンホールです。

地紋のT字は電電公社時代から継承されています。中央のマークは力強い無限運動を表す「ダイナミックループ」と呼ばれるデザインなのですが、僕は受話器のコードみたいだなと思ってます。数学的には「パスカルの蝸牛」と呼ばれる曲線 
r=a \cos θ+b
です。以前このロゴで角の三等分問題を解いたことがあるので、数理曲線好きの方はぜひ読んでみてください。


今まで数多くのマンホールを鑑賞してきましたが、逓信省電電公社 → NTT と戦前から平成に至るまでの通信系マンホールが一堂(一道?)に会しているスポットは初めて見ました(そもそも逓信省マンホールが珍しいです)。欲を言えば、2017年にグッドデザイン賞を受賞した最新のテーパーダイア型マンホール蓋も設置して、この道に歴代マンホールをコンプリートしていただきたいですね。よろしくお願いします、NTTさん。

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NTT持株会社ニュースリリース 2017年10月4日「摩耗しにくく、摩耗してもひと目で分かる点検しやすいマンホール鉄蓋デザインが登場」より引用

*1:「〒」マークは、逓信省の頭文字である「テ」もしくは「T」に由来しています。

*2:本記事中では「戦前」と書いてますが、逓信省が電信電話事業を管轄していたのは「昭和24年以前」なので、厳密には「戦前もしくは昭和20年代初頭」が正しいです。

*3:マンホールの「Tの字地紋」は、昭和24年ごろに中山商店川口工場長・伊藤哲男氏によって考案されました。一次出典は未確認ですが著書『マンホール鉄蓋』(1969) か『電電ジャーナル』1984年6月号(Twitter情報より)かと思われます。

家計簿Googleスプレッドシートの閲覧用アプリをGlideを使って爆速で作ってみた

以前、夫婦で共有できる家計簿アプリをGoogleフォームで作ってみました。

fffw2.hateblo.jp

スマホ片手にレシートの情報をぱっと入力すると…

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自動で家計簿Googleスプレッドシートが作成されるという代物です。

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Googleフォームの基本機能+α で簡単に作れるので、読者の方から「記事を読んで実際に作ってみました」という声もいただきました。ありがとうございます。

一覧画面小さすぎ問題

しばらく使っていると問題点が浮上しました。

「あれ?このレシートって入力したっけ?」「前回散髪に行ったのはいつだったっけ?」といったときに家計簿をスマホで見たくなり、Googleスプレッドシートアプリを開くのですが…

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ポチッ…

めちゃめちゃ小さくて見づらい!!!

未だに4インチの初代iPhoneSEを使い続けている私も悪いんですが、スマホの小さな画面でGoogleスプレッドシートを直接見るのは可視性が悪すぎます。なんとかならんものか。

そうだ、閲覧用アプリを作ろう!

Googleスプレッドシートのデータを見やすくするための閲覧用アプリ(ビューワー)を作ろうと思い至りました。スマホに適したサイズで家計簿を一覧表示できて、検索・照会ができれば十分です。

しかしアプリ開発環境を整えるとなると結構大変。Googleスプレッドシートをいい感じにスマホ用に変換できるSaaSがあればよいんだけどなあ…… そんな都合の良いものあるわけ……



ありました。

Glide
https://www.glideapps.com/

f:id:fffw2:20200607214307p:plain
無料で5分でアプリが作れるという自信満々なキャッチコピー

どうやらGoogleスプレッドシートを簡易データベースのように扱い、手軽にPWA(Progressive Web Apps)を開発できるサービスのようです。

「本当にそんな手軽に作れるのか?」と疑いながら、Googleアカウントでログインして、「Create App」>「From Google Sheet」から家計簿Googleスプレッドシートを選び、編集画面で表示したい列やレイアウトをいじってみたところ……

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ジャジャン!!!

本当に爆速でいい感じのビューワーができました! 機能が多すぎず、マニュアルを読まなくても直感的に作れるのが最高ですね!


いくつか工夫した点を紹介しておきます。

工夫1:1つのフィールドに複数の項目を表示する

一覧画面は「Title」「Details」「Caption」「Image」から成ります。1つのフィールドにはGoogleスプレッドシートの1つの列(カラム)しか対応付けられない仕様のようです。「Title」に「日付」と「金額」の両方を表示したかったので、一工夫しました。

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ポイントは「画面表示用のスプレッドシートを別途作る」です。

Googleフォームの入力内容が蓄積されるスプレッドシートとは別に、Glideでの画面表示用のスプレッドシートを作成しました。データベースでいうビューのようなイメージで、メイン(実表)となる家計簿スプレッドシートをIMPORTRANGE関数で参照して画面表示用のスプレッドシート(ビュー)を作成し、表示したいフォーマットに合わせて列を加工しています。

f:id:fffw2:20200607220529p:plain
日付(yyyy/MM/dd) + 半角空白 + 金額(¥###0)。列全体の加工にはARRAYFORMULA関数を使うと楽。

全体の流れを図示すると、次のようになります。

全体の流れ

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もとのスプレッドシートに列追加するのではなく、別途スプレッドシートを作ったのは、今後入力画面(Googleフォーム)に新たな項目を追加した際に列が自動で上書きされてしまう可能性があると考えたからです。入力内容を格納するためのスプレッドシートに閲覧画面用の余計な列を含めるのは設計的にも望ましくないですしね。

工夫2:入力内容を即時反映させる

メインユーザーである妻からの指摘で気づいたのですが、入力内容がGlideの画面に反映されるまでにタイムラグがあるようです。試してみたところ数分待っても反映されないことがしばしば。これはいけない。

Glideの公式マニュアルを読んでも解決策が載っておらず非常に困ったのですが、Qiitaで裏技が紹介されていました。

qiita.com

スイッチ・コンポーネントは、フィールドにチェックボックスを付けるものですが、動作には強制リフレッシュを伴うので、リロードの代わりに使うことができます。

スプレッドシート上のON/OFFを更新するための「スイッチ」を、リロードボタンとして使っちゃうというコペルニクス的転回です。頭良い!

早速私も実装しました。

これで手動ではありますが、任意のタイミングで即時反映できるようになりました。

工夫3:Glideの無料枠上限内に収める

2019年11月に運用開始してから半年ほどゴキゲンに使ってたのですが、2020年5月に突然使用不能に陥りました。

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ストレージがいっぱいという警告メッセージ。左上のレコード数は「500/500」で赤くなってます。

いつかはこうなるだろうなと予想はしていたのですが、Glideの無料枠上限である500レコードに引っかかってしまったようです。

対策として、画面表示用のスプレッドシートの件数を500件に絞ることにしました(IMPORTRANGE関数の範囲を調整することで実現)

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工夫1で画面表示用のスプレッドシートをメインのスプレッドシートから独立させていたのが、功を奏しました。

補足:直近500行を取得する方法

IMPORTRANGE関数で直近500行を取得する方法を詳しく教えてほしいというはてブコメントをいただいたので、補足しておきます。下記のように関数を駆使して直近500行(厳密には499行)を取得してます。

=IMPORTRANGE(
  "スプレッドシートのURL",
  "A"&TO_TEXT(
    COUNTA(
      IMPORTRANGE(
        "スプレッドシートのURL",
        "B:B"
      )
    )-500+2
  )&":J"
)

わかりやすくするために改行を入れました。COUNTA関数でシートの行数を取得しています。例えばシートの行数が2000行だとすると

=IMPORTRANGE(
  "スプレッドシートのURL",
  "A1502:J"
)

となり、A1502からJ2000までの499行を取得できます。これにヘッダー1行を足すと、ちょうど500行になります。

まとめ

Glideを使ってノンコーディングで簡単にGoogleスプレッドシートの閲覧用アプリを作ることができました。家計簿だけでなく幅広い応用の可能性がありそうです。今回は紹介しきれませんでしたが、写真挿入、グラフ生成、地図作成など、様々な機能があり、バージョンアップでどんどん新機能も増えていってます。Googleドライブ上で持て余しているデータがある人は是非Glideでアプリ化してみてはいかがでしょうか。


素材提供:GoogleスプレッドシートGoogleフォームのアイコンは「アイコン8」のフリー素材を使用しました

2021-04-18:「直近500行を取得する方法」を追記

地番の振り方マップ(一村通し or 字別付番)

明治時代の地租改正のときに各府県で土地調査が行われ、その際に土地一筆ごとに番号がつけられました。150年経った今もなお使われ続けているその番号こそが、地順番号、略して「地番」です。

地番の振り方には2つのパターンがあります。

1. 一村通し(大字通し)

大字(旧藩政村)単位で1から順に地番を振る方法です。3桁や4桁の大きな地番になることもしばしば。小字*1がなくても地番だけで土地を特定できるので、一村通しの地域では小字が省略され、住民に小字の存在すら知られていないことが多いです。

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一村通しの例:埼玉県 上尾市 平方 453-1
登記上の正式な住所は「埼玉県 上尾市 平方 字横町 453-1」ですが、大字単位で地番を振る地域なので、小字が必要なく、大字「平方」の後の小字が省略されています。大字「平方」には「横町」「石井戸」「三ツ塚」「南」などの小字が20個程度ありますが、普通の地図には小字が載っておらず調べるのも一苦労*2です。

2. 字別付番(字限り付番*3

大字の中の小字ごとに1から順に地番を振る方法です。その特性上、小字を省略すると土地を特定できなくなるので、字別付番の地域では小字が現役で使われていることが多いです。

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字別付番の例:愛知県 北名古屋市 熊之庄 十二社 66-3
大字「熊之庄」の中には「十二社*4」「射矢重」「牛流」「城ノ屋敷」などの小字が20個程度あります。各小字内で地番を1から順に振っているため、小字を省略して「北名古屋市 熊之庄 66-3」のようには表せません。

地番の振り方マップ(一村通し or 字別付番)

一村通しと字別付番について知ると「私の住んでいる地域の地番はどっちの方式?」と気になってきます。そこで、一村通しの地域と字別付番の地域を調べて、日本地図にまとめてみました。が一村通し、が字別付番、が両者混在です。

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大多数が一村通しを採用しており、東北・北陸地方や愛知県などの一部だけが字別付番を採用しています。

  • 大蔵省『府県地租改正紀要』に記載されている旧府県別の「地押丈量ノ概況」を参考にして、上図を作成しました。
  • 山形県は旧鶴岡県が字別付番、それ以外が一村通しです。
  • 富山県は旧新川郡が字別・一村通し混在で、それ以外が一村通しです。
  • 京都府は旧京都府が字別付番、旧豊岡県が一村通しです。
  • 山梨県山口県については、地番の振り方に関する記載がなかったので、今尾恵介氏の『番地の謎』を参考にしました。*5

参考文献

*1:「小字って何だっけ?」という方は先にこちらの記事をどうぞ。 fffw2.hateblo.jp

*2:埼玉県上尾市平方453-1の小字はGoogle検索を駆使して調べました。"上尾市平方字"というキーワードで完全一致検索し、東京都地域防災計画の資料で「埼玉県上尾市大字平方字横町433番の5地先」、老人ホーム永寿荘の新築工事資料で「埼玉県上尾市大字平方字横町498外」という記載を見つけ、433番と498番の小字が「字横町」であることから、その間に含まれる453番も「字横町」であると判断しました。一村通しの地域では小字をググって特定できるほうが稀なぐらいです。確実に知りたい人は法務局に行きましょう。

*3:「字限り」と書いて「あざきり」と読みます。

*4:北名古屋市熊之庄「十二社」は「じゅうにそ」と読みます。十二所神社関連の小字だと思われます。

*5:今尾恵介氏『番地の謎』p.77「佐藤甚次郎氏の『神奈川県の明治期地籍図』に掲載された一覧表によれば、「字別付番」の県(旧県)は、少数派であるが青森県岩手県秋田県の一部、宮城県山形県の一部(旧・鶴岡県)、石川県、福井県、愛知県の一部、愛媛県(現・香川県部分の大規模村)、徳島県(山村の一部)、熊本県の一部で採用され、それが基本的には現在に受け継がれている。」

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ブラタモリ飛鳥回に登場した小字「字水落」は本当に水時計由来なのか

ブラタモリは深夜放送時代から見てます、風霊守です。

いやぁ、先日のブラタモリ飛鳥回は地名好き垂涎の神回でしたね!

2020/04/18放送 ブラタモリ#162
「奈良・飛鳥〜なぜ飛鳥は日本の国の礎となったのか?〜」 www.nhk.jp

斉明天皇の時代の国づくりを飛鳥の古地図から探ると銘打って、案内人の先生がさっと取り出したのが、明治22年高市郡飛鳥村実測全図』でした。字名と地番がびっしりと描かれた地図がアップになった瞬間、全国の小字ファンの皆様におかれましては、「おおおっ!地籍図だ!!」とテレビの前で拍手喝采したことでしょう。

そして、タモリ一行は古地図を頼りに「字水落」という小字名の場所へ向かいます。そこにあったのは日本で最初の時計(水時計)が建てられた遺跡です。日本書紀にも登場する時計で、階段状の水槽に水を注ぎ、下の水槽に溜まる水の量で時間を計るという仕組みでした。

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飛鳥水落遺跡

案内人「字名に「水落」ってさっき紹介しましたが、あの字名がついている明治の頃は、ここに水を落として時間を計る水時計があったということはわかってなかったんですね。わかってなかったんですけど水時計が見つかったと。」

タモリ「だから地名というのは土地の記憶なんですよね。本当は変えちゃいけないんですよ。地名変更なんて行政の便利さで変えてますけども、本当は駄目なんですよね。やっぱり守っとかなきゃ駄目ですよね。」

1400年前にこの地に水時計があったことを地名だけが記憶にとどめていた!まさに地名のロマンですね!ごちそうさまです。

小字から土地の記憶を紐解くというのは、私が小字研究に傾倒している所以でもありますし、かの柳田國男先生も『地名の研究』で「多くの前代生活を闡明」することが小字研究の醍醐味だと仰ってました。

やっぱり地名って面白いなあ。

……

ん!? ちょっと待てよ…

番組終了から小一時間経ち、心が平静に戻ってくると、ふと疑問が浮かびました。

「本当に水時計が水落という地名の由来なのか???」

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漢検1級 2019年度第3回 自己採点結果

漢検1級 2019年度第3回(R1-3)を受検してきました。前回は合格点まであと12点だったので「今回こそ合格するぞ!」と意気込み、4ヶ月掛けて漢検1級模擬試験倉庫さんの模試(45回分)を解きまくりました。果たして合格の夢は叶うのでしょうか!?

それでは漢検協会が公開している標準解答をもとに自己採点していきます。

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大阪駅の床に描かれた巨大迷路 完全攻略マップ

関西最大のターミナル駅である大阪駅。その中央コンコースにある「秘密」が隠されているのはご存知でしょうか。まずは写真をご覧ください。

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床のタイルに注目。

黒色と白色のタイルが奇妙な配置で敷き詰められていることが気になりませんか。

実は……


巨 大 迷 路 になっているのです!!!


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