ふれっしゅのーと

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趣味に生きる30代エンジニアが心に移りゆくよしなし事をそこはかとなく書きつくるブログ

藁にもすがる思いで『エンジニアのための時間管理術』を読んだ

最近仕事もプライベートもやりたいことが多くてタスクがあふれかえっているので、藁にもすがる思いで O'Reilly から出版されている『エンジニアのための時間管理術』を読んでみました。読書メモと自分の感想を記録しておきます。


はじめに

著者は Thomas A. Limoncelli 氏。タイムマネジメントが得意なシスアドおじさん。Limoncelli というラストネームが珍しい気がしたので調べてみたところイタリアのレモン・リキュール Limoncello(リモンチェッロ)の複数形でした。仲間にジンとかウォッカとかいそう。

それでは、深く腰掛けて、手を外に出さないで、安全バーをおろして楽しんでください。Tom がタイムマネジメントと健全なる世界へあなたをご案内します。


青山剛昌/小学館名探偵コナン(1)』より引用)

第1章:タイムマネジメントの原則

この本全体の軸となる6つの原則です。

  1. タイムマネジメント情報を1箇所にまとめる
  2. 頭の片隅に置いておかず外部ストレージ(=メモ)に追い出す
  3. 日課(ルーチン)を定める
    • 無駄な意思決定プロセスを挟む時間が惜しいので
  4. 過去の経験則に裏付けられた自分の行動指針を持つ
    • 「早いに越したことはない」とか
  5. 割り込みは集中力の天敵なので最小限に抑える
  6. プライベートにも仕事と同じツールを使う

大体普段から心がけている内容です。特に 2. は効果的。頭の片隅にずっと置いておくと結局集中力の妨げになるので。最後の 6. は機密保持の観点でやめておいたほうがよいと思います。個人的に気になるのは 5. の割り込み対策。このあとの章で対処法が詳しく説明されるようなので期待。

第2章:集中と割り込み

割り込みタスクが入ると、そのあと元のタスクに戻るときに「思い出す時間」が余計にかかるので、タイムマネジメントにとって害悪でしかありません。顧客からの要求が割り込んできたときの対処法は

「委任」「記録」「実行」

の3つ。他に対処できる人がいれば「委任」し、緊急でなければ要求を「記録」し(頭で記憶はNG)、本当に緊急であれば即「実行」する、という三択です。どの選択肢を取るか冷静に判断することが大事。割と当たり前のことを言ってる気もしますが、自分の場合、緊急性を十分に考えず「ほぅ、確かにそれも気になる…」とつい割り込みタスクに気移りして「実行」しがちなので、肝に銘じておきたいです。

また、章末のコラム『とにかく着手する』では、じっくり集中してコメントを考える時間が取れるまで返信を後回しにしちゃう筆者友人の話が出てきて、まさに自分と重なるものがあったので、ドキッとしました。この手のタスクはつべこべ言わずにすぐ着手するに限るんですよね。巧遅は拙速にしかず。

余談ですが、ブログ記事の執筆もいつもなら自分に甘く「あとでじっくり余裕があるときに…」としがちなのですが、本書のコラムに刺激されて鉄は熱いうちに打たねばと思い、今回は読書後すぐに感想を書いています。

第3章:ルーチン

筆者こだわりのルーチンが14ページにわたってぎっしり紹介されていて、ちょっと多い(笑) 「毎週日曜日に給油する」は頻度高くないか?と感じたけど、車通勤だとそんなものなのだろうか。

良いルーチンを一度作っておくと、毎回の決定コストを省くことができ、創造的な活動に専念しやすくなるとのこと。僕の場合は重要度の高い定期タスクについては、忘れないようにスケジューラーやリマインダーで管理しているのですが、本書では重要度の低いタスクも(あんまりサボるとあとでツケが回ってくるので)ルーチン化すべきだと書いてありました。確かにその通りで、はっと気づいたら塵が積もって山になっていて苦しむことがしばしばあるので、もう少し瑣末なルーチンも積極的に増やしていきたいです。

第4章:サイクルシステム

筆者の考えた最強の時間管理術「サイクルシステム」の話です。

  1. 今日の会議・約束を除いた作業可能時間を計算する
  2. 今日やることの所要時間を見積もり、作業リストを作る
  3. 予定に取り組む
  4. 未完了タスクを翌日のリストに回す
  5. このサイクルを毎日繰り返す

画期的で目新しいアイデアを期待していましたが、意外と普通ですよね。TODO アプリで標準機能として実装されているレベル。まあ僕の場合、TODO アプリを起動すると毎日繰越タスクが 100 件ぐらい初期表示されているので、筆者の唱えるサイクルシステムを全然正しく実践できてないのは明らかなのですが。

第5章:作業リストとスケジュール

サイクルシステムの具体的な手法の話。2006年に出版された本なので紙の手帳や PDA(いにしえの情報端末)を使った実践方法が書かれていて隔世の感がありますね。PDAスマホに読み替えると現代人も理解しやすいです。

特に「処理しきれない作業」の攻略法は食い入るように読みました。

  • 優先順位の低い仕事を翌日に回す
  • 作業を小分けにする
  • 作業の範囲を狭める
  • 所要時間を多めに見積もる
  • 委任する
  • 優先順位を上司に確認する
  • 会議を欠席する
  • 残業する(最悪の選択肢)

何よりなんとなくで今日の作業を進めていくのではなく、1日の最初に10分程度の時間を確保して作業リストを作る ことがサイクルシステムの円滑な進行には欠かせません。つい PC を開くとすぐにメールチェックを始めてしまいますが、ぐっと堪えて、作業リストを作るまで他の作業を始めないように心がけなくてはいけませんね。

第6章:カレンダーの管理

カレンダーに予定を書き込んでおくと役立つ。あたりまえ体操

第7章:人生の目標

目標を明確にしておかないと、どこを目指して努力すればよいのかわかりません。仕事とプライベートのそれぞれで、ひと月、1年後、5年後の目標をリストアップし、優先順位をつけて、達成に必要な手順を書き出しておき、「次の手順」を作業リストに追加することを筆者は推奨しています。(そして、月に一度、目標と手順を見直します)

 とにかくそれらをリストアップしてください。終わるまで待っていますから。本当です。待っています。表が完成するまで、次の段落には進んではなりません。あなたの頭の中ではなく、実際の紙にリストアップしてください。
 それらをリストアップしませんでしたね。いつかこの章をもう一度読んだときに表を埋めればいいと考えましたね。本書のすべての演習には、共通点が1つあります。それは、実際にやってみなければ、うまくいかないことです。ですから、今すぐ紙を取り出して、書き始めてください。

と、ここまでしつこく念押しされました。まあ、まだ書いてないんですが。

第8章:優先順位

優先順位に関するノウハウが詰まっている章。めちゃ有益。

  • 簡単・効果大 > 難・効果大 > 簡単・効果小 > 難・効果小 の順で優先
  • 難・効果大 より 簡単・効果小 を進めたくなるが、難・効果大 に挑戦する社員のほうが優遇されがち
  • 顧客の要求を優先したほうが、顧客満足度が高まって得。
  • 上司の要求は特別に優遇して最優先で対応。要求の裏には自分が知らない大きなプロジェクトとの依存関係があることが多いため(+上司評価が上がって給与増額にもつながる)

第9章:ストレスの管理

休憩しよう。深呼吸しよう。いまわの際の言葉が「もっと仕事の時間を増やせばよかった」という人はいない。

  • 本当に負担が重くて立ち行かなくなったら上司に相談
  • 休暇を取ってリラックス(旅先にノートPCを持って行くな)

ストレスを抱えていると仕事の効率が落ちるので、時間管理術の観点でも休暇は大事。「休暇を満喫するには、12〜14日は必要です」と書いてあって、アメリカとの文化の差を感じました。丸2週間休んでみたいものです。

第10章:電子メールの管理

メールに忙殺されないよう適切なフィルタ設定が大事。古いメールに価値はないので、どんどん削除しよう!という話には全く共感できず(2006年当時はストレージが貧弱だったのかな)

第11章:時間の浪費

しょーもない作業、不要なメーリス、どうでもよい雑談、迷惑なセールス、無駄な会議、等々、時間の浪費はどんどん排除していこうという話。僕も最近は任意参加の会議には(同調圧力に屈さず)極力参加しないようにしてます。

本筋とは関係ないですが、時間の浪費の話の中で、SNS ではなく「掲示板やUsenet」が出てきたり、「DVD を郵送でレンタルできる Netflix」が出てきたりして、インターネット考古学的な観点でも興味深かったです。

第12章:文書化

最近は Wiki という便利なテクノロジーがあって… と前時代的な話が淡々と進むので、現代人は読み飛ばしても良い章だと思います。ちなみに筆者は「Wiki」という名前が気に食わず「たとえ鉛を金に変えようとも、あのふざけた名前のシステムは絶対に使用しない」と3年間 Wiki を無視していたそうです。

第13章:自動化

正直、竜頭蛇尾な感じで、第10章以降は流し読みでもよいと思います。本章では自動化が便利だというエンジニアにとっては当たり前の話が書かれています。Makefiletcpdump の例はシスアド色強め。現代だと Python による自動化なんかを別の本で勉強したほうがよいです。

おわりに

最後に、本書のテクニックを実践して手に入れた自由時間は、仕事ではなく愛する家族のために使うべきだと締められていました。良い話。