ふるさと納税チキンレース
ふるさと納税、良いですよね。
思い入れのある市町村に寄付すると、税金が控除されて節税になり、おまけに返礼品もいただけちゃうという素晴らしい制度です。
僕も毎年楽しみにしているのですが、ひとつだけ厄介なことがあります。
寄付上限額の計算 です。
10万円寄付しても100万円寄付しても自己負担が2000円で済むわけはなく、自分の年収や家族構成などによって寄付上限額が決まります。
しかし、ふるさと納税の簡易シミュレーションサイトでざっくりと計算してみても、サイトによって計算結果がバラバラでどの計算結果を信じてよいのかわかりません。
安全のために複数のサイトで計算して最も少ない額にしておくという慎重派の人もいるでしょうし、1円でも多くふるさと納税の恩恵を得ようと危ない橋を渡るタイプもいることでしょう。年収が確定する師走には、全国各地でこういった ふるさと納税チキンレース が繰り広げられているのです。
結局自分で計算するのが最善手
重要公式
控除限度額 =
個人住民税所得割額 × 20% 100% - 住民税基本分10% -(所得税率 × 復興税率1.021) + 負担金2,000円
(「ふるさと納税 控除の目安と限度額の計算方法 - ふるさとぷらす」より引用)
という公式に則って厳密計算するに限ります。
公式の背景は ふるさと納税の上限額の計算方法 - 埼玉県和光市 に詳しく書かれているので、証明を理解しないと公式を使えないタイプの人は是非ご一読を。特に理解しなくても以降の計算で差し支えはありません。
事前準備
源泉徴収票があると楽です。赤枠で囲った3つの項目(支払金額、給与所得控除後の金額、所得控除の額の合計額)が重要です。
え?源泉徴収票がまだ手元にない??
ご安心を。
給与明細をもとに正しく計算すれば、素人でも1円単位で源泉徴収票の値を導出できます!
自分の場合の計算方法をメモしておくと……
- 源泉徴収票の「支払金額」
年間給与支払額(給与明細の天引き前の値) - 交通費 - 非課税福利厚生
- 交通費を給与に含まないのは盲点(参考:No.2508 給与所得となるもの - 国税庁)
- 12月給与に年末調整還付金が含まれる場合は除いておく
- 源泉徴収票の「給与所得控除後の金額」
- 国税庁のシミュレーターで計算
- 収入が660万円未満の場合は上記ページの速算表は使えないがシミュレーターは問題なく使えるっぽい(所得税法別表第五と計算結果を比較したら合ってた)
- 収入が850万円超で子ども・特別障害者等を有する場合は所得金額調整控除も加味しなくてはならない(参考:No.1411 所得金額調整控除 - 国税庁)
- 源泉徴収票の「所得控除の額の合計額」
健康保険 + 厚生年金 + 雇用保険 + 基礎控除48万円
+ 小規模企業共済等掛金控除
(2022-11-03 追記/iDeCoを始めたので)- 人によってはもっとたくさんの控除が発生するので要注意。配偶者控除、扶養控除、勤労学生控除、医療費控除、生命保険料控除、地震保険料控除、等々。(参考:No.1100 所得控除のあらまし - 国税庁)
と、こんな感じです。
過去数年分の給与明細と源泉徴収票を並べて、数字を足したり引いたりして試行錯誤しながら、源泉徴収票の数字と答えがぴったり一致する計算式を見出しました。
課税所得金額の算出
あとの計算で必要になるので課税所得金額(課税標準額とも)を求めておきます。
課税所得金額 = 源泉徴収票の「給与所得控除後の金額」 - 源泉徴収票の「所得控除の額の合計額」 (1000円未満切り捨て)
です。これが所得税や住民税の計算のベースになります。
個人住民税所得割額の算出
課税所得金額の約1割が個人住民税所得割額です。
厳密には下式で計算します。端数処理のタイミングに気をつけてください。
市区町村民税 = 課税所得金額 × 0.06 (100円未満切り捨て)
都道府県税 = 課税所得金額 × 0.04 (100円未満切り捨て)
個人住民税所得割額 = 市区町村民税 + 都道府県税 - 調整控除(2500円)
ちなみに最後の式に出てくる「調整控除」はほとんどの場合2500円になるようです。(参考:住民税の計算で出てくる調整控除って? FPがわかりやすく解説! - ファイナンシャルフィールド)
所得税率の算出
これは複雑な計算なしで所得税率表を見るだけなので簡単です。
課税所得金額 | 所得税率 |
---|---|
195万円未満 | 5% |
195万円 〜 | 10% |
330万円 〜 | 20% |
695万円 〜 | 23% |
900万円 〜 | 33% |
1180万円 〜 | 40% |
4000万円 〜 | 45% |
(参考:No.2260 所得税の税率 - 国税庁 )
公式に代入
ここまでで算出した「個人住民税所得割額」と「所得税率」を最初の公式(下記再掲)に代入すれば、ついに厳密なふるさと納税寄付上限額が求まります!
控除限度額 =
個人住民税所得割額 × 20% 100% - 住民税基本分10% -(所得税率 × 復興税率1.021) + 負担金2,000円
(「ふるさと納税 控除の目安と限度額の計算方法 - ふるさとぷらす」より引用)
計算する際は「%」を小数に直してくださいね。
お疲れ様でした!!!!
詳細シミュレーターでもほぼ同じ結果が出るが
ふるさと納税詳細シミュレーターを使えばもう少し手軽に計算できます。簡易シミュレーターと違って、ほぼ正解の値が出ますが、それでも手計算には劣るので±1000円ぐらいは誤差を見込んだほうがよいかもしれません。
詳細シミュレーターで検索するとたくさんヒットしますが、中でも個人的におすすめは
- 楽天市場ふるさと納税詳細シミュレーター
- メリット
- シンプルなUIでありながら多機能で使いやすい
- 困ったときは「?」アイコンを押せば解決。国税庁へのリンク付き。
- デメリット
- 住民税所得割の計算で100円未満切り捨て処理が抜けていそう
- 住民税所得割に調整控除2500円が考慮されていなそう
- メリット
- さとふる詳細シミュレーター
の2つです。自分は手計算の検算のために使っています。
源泉徴収票の「支払金額」「給与所得控除後の金額」「所得控除の額の合計額」さえ計算してしまえば、あとは詳細シミュレーターに数字を入力するだけで、かなり精度の良いふるさと納税寄付上限額を導出できるので便利です。
まとめ
- ふるさと納税チキンレースに勝つには手計算 or 詳細シミュレーター。簡易シミュレーターは甘え。
- 源泉徴収票がなくても計算すれば先読みできます。過去の源泉徴収票と給与明細で計算が合うか練習してみましょう。
- え?住宅ローン控除!?ごめんなさい難しくてよくわかりません。
おやくそく
来年末の自分への備忘録みたいなものですので、当記事の内容によって生じたいかなる損失についても筆者は一切責任を負えません。正確性を期するように気をつけましたが、もし根本的に間違っていた場合はTwitterやコメントでご指摘いただけると幸いです。
(追記)本当にふるさと納税チキンレースを勝ち抜けられたか
ふるさと納税チキンレースでギリギリを攻めた人は本当に控除限度額をオーバーしなかったのか気になることでしょう。僕は毎年気になっています。
結果は毎年5〜6月に届く住民税決定通知書で確認できます(確定申告した人は昨年度の確定申告書も用意してください)
▲住民税決定通知書(手前)と確定申告書(奥)の実物。赤囲みの値を検算に使います。
- 確定申告してない人:
住民税決定通知書の摘要欄の『寄附金控除額』
- 確定申告した人:
(寄付金額-2000) × 確定申告書の『課税される所得金額』から算出した所得税率 × 復興特別所得税率(1.021) + 住民税決定通知書の摘要欄の『寄附金控除額』
を計算してください。
この値が (寄付金額-2000)
円になっていれば、成功です!!おめでとうございます!!