ふれっしゅのーと

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趣味に生きる30代エンジニアが心に移りゆくよしなし事をそこはかとなく書きつくるブログ

中学時代のひどい自由研究を大人になった私がぶった切る

お盆に実家に帰ったときに中学時代の自由研究を見つけました!

夏休みの自由研究、懐かしいなあ。大人になった今なら自由研究のテーマになりそうなネタがぽんぽんと浮かびますが、小学校を卒業して間もない15年前の私はさぞかしテーマ決めに頭を悩ませたことでしょう。

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錆の研究

中1の私の研究テーマは(さび)です。チョイスが渋い…

錆の何を調べたのかまるでわからない「錆の研究」という雑なタイトルですが、はたしてイオンも知らない中学生の私はちゃんと錆を研究できたのでしょうか。

 

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①研究の動機・目的
自転車を雨ざらしにしてたらさびたことがありました。そこで僕は水以外のものでもさびるのかと思ったので、この研究をしようと思いました。この研究でどんな液体がさびるか。また、さびた液体にはどのような関係があるのかを明らかにしようと思いました。

身近な現象に着想を得たパターンです。何気ない日常の中の「水で錆びる」という現象に対し、一歩立ち止まって「では他の液体ではどうなのか」と疑問を抱く探究心!!まさに模範的な研究動機です。

…が、残念、実はこれはでっちあげ。動機は往々にして後付けの産物です。

ドラえもんの理科漫画を読んで、「おっ!錆の研究だったら、いろんな液体で錆びさせるだけで、そこそこ面白い結果が出て自由研究が完成しそう。生物の観察とかより絶対簡単だろ。」などという、よこしまな思いでこの研究を始めた記憶があります。ごめんなさい。

 

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②研究の方法
5つの容器の中に、空気、水、油、食塩水、砂糖水を入れ、そこにくぎをつるします。それを2週間、放置しておき、それぞれのくぎにどのような変化が生じたのかを調べました。

空気だけの容器を用意して一丁前に「対照実験」をしている点は評価できますが、研究方法の説明があまりにも不十分です。ぱっと読んだだけでいくつも疑問が湧いてきます。例えば

  • それぞれの液体を選んだ理由は何なのか。

答えは

  • 油:水分を含まない液体なので(水との対比)
  • 食塩水:海岸では金属が錆びやすいという前提知識があったので
  • 砂糖水:何かの溶液であれば食塩水と同様に金属が錆びやすいと考えたので

といったところでしょう。心の中では、空気や油では錆びず、食塩水と砂糖水では水に比べて錆びやすいと考えていたのだと思います。こういった「予想」がある場合は、しっかり書いておくべきです。

他にも、実験方法で説明が不十分な点として次のようなものが挙げられます。

  • 容器の蓋は開けていたのか閉めたのか。
    (→ 蒸発を防ぐために閉めていた)
  • なぜ釘を沈めるのではなく吊るしたのか。
    (→ 空気との境界で錆が生じやすいという前提知識があった)
  • 食塩水や砂糖水の濃度は?各液体の深さは?
    (→ 定量的な議論は科学の基本)
  • なぜ放置する期間を「2週間」にしたのか。
    (→ お盆の家族旅行前に装置を仕掛けたからだろうな)

また、釘の表面は防錆のためにコーティングされている可能性が高いので、本来、こういう実験をする場合は、なるべく表面を紙やすりで磨いておくべきです。今回の自由研究ではたぶん磨いてません。百均で買った安い釘だったので運良く錆びてくれたのだと思います。

 

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③研究の結果
空気  → 変化なし
水   → さびた
油   → 変化なし
食塩水 → よくさびた
砂糖水 → 少しさびた

実験結果の書き方としてはこの程度の簡潔さで問題ないでしょう。あれこれ考えるのはこの後の「考察」でやりますので。

ただ、接写撮影が難しかったのはわかりますが、強いて言えば、せめて色を塗っておいてほしかったです。たぶん赤茶色だけでなく黒っぽく変色した箇所もあったのではないかと思うのですが、上図からは全く読み取れません。

 

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④研究の考察
さびた3つの液体、水、食塩水、砂糖水には全部、水(H2O)が含まれている。辞典で調べてみると、さびは鉄(Fe)と酸素が結びついてできているということがわかりました。食塩水がよくさびたのは食塩の成分である塩化ナトリウム(NaCl)がさびるのを早めたからでした。

考察が全然ダメ!!!

この頃の私は「考察」が何なのかよくわかってなかったんだと思います。実験結果からどんなことがわかるのかを深く考えるのが考察だというのに、私が書いた3点は

  • 水を含む液体で錆が生じた(実験結果)
  • 錆は鉄と酸素の化学結合により生じる(文献調査)
  • 食塩は錆の進行速度を早める(文献調査)

で、全く考察してません。なんてこった。

 

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⑤反省・これからの課題
この研究でさびるのには水が必要ということがわかりました。今度は酸素をつめた容器にくぎを入れたらさびるのか。アルミや銅でもさびるのか。など数々の疑問が残っています。今後も是非、実行してみたいと思います。

「この研究でさびるのには水が必要ということがわかりました」という「考察」を、一体なぜ「反省」のページに書いたのか。そもそも冒頭で「僕は水以外のものでもさびるのかと思ったので、この研究をしようと思いました」と書いていたのに、まとめが「さびるのには水が必要」って何なんだ… ひどすぎる。

あと、これからの課題にいろいろ回しすぎです。気になることが残っているなら、それを研究すればよいのに。(きっと8月31日になってしまったのだろうな)

 

より良い研究にするにはどうすればよかったか?

「錆の研究」をより良い研究にするには、どうすればよかったかを本気で考えてみます。

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この実験結果を15年の時を経て、改めてじっくり考察してみると、1つ面白いことに気づきました。食塩を水に溶かすとただの水のときよりも錆びやすくなるのに、砂糖を水に溶かすと逆に錆びにくくなっているのです。つまり、水に溶かす物質(溶質)によって錆びやすくもなれば、逆に錆びにくくなることもあるということがわかります。

  • 砂糖の何が影響して錆びにくくなったのか。
  • 食塩の何が影響して錆びやすくなったのか。

おそらく大人でも正確に答えられる人は少ないのではないでしょうか。なかなかの難題です。「この謎を解き明かす」という目的が明確になると、俄然自由研究のモチベーションが上がってきますね。理科で習った知識を総動員して、いろいろと原因を予想してみましょう。

  • 食塩水は電気を通しやすいが砂糖水は電気を通しにくい。電気の流れやすさ(電気伝導性)が錆びやすさに関係しているのではないか?
  • 食塩水はさらさらだが砂糖水はねばねばする。ねばねばの具合(粘性)が錆びやすさに関係しているのではないか?
  • 錆びるためには酸素が必要。溶質によって水の中に溶けている酸素の濃度(溶存酸素濃度)が変わるのではないか?

予想をしたら、それを確かめるための実験を考えていきます。「電気の流れやすさ」を正確に測ろうとするとそれだけで1つの自由研究になりそうなので、電気が流れるか流れないかで大きく分類してみるとよいかもしれません。「ねばねばの具合」は砂糖水の濃度を濃くしていけばよさそうです。「酸素の濃度」は難しいですが、酸素濃度を測定するためのキットCODパックテスト)が市販されているので、こういった商品を利用してみるのも手です。

こうして、様々な予想に対して実験をしていくと、時として予想に反した結果が出てきて、再度「なぜなのか?」と考察する局面になります。そしてまた別の予想をして実験を行います。この「予想→実験→結果→考察」の繰り返しが自由研究の面白さにつながるのだと思います。

もちろんプロの研究者でさえ解明できていないような「パンドラの箱」を開けてしまって、残念ながら謎を解き明かすことができないこともあるでしょう。夏休み自体の期間も限られていますしね。しかし、答えに至らずとも、どんなことを考えてどんな実験をしてみたという過程こそが大事なので、「ちゃんと結論が出るかな…」などと恐れずに気になったことを本気で追究してみてください。自由研究は、その名の通り本当に自由に好きなことを研究できる機会ですからね。是非存分に楽しんでください! 大人になったら社会的意義とか研究費獲得とかも考えないといけなくなるので。

 

おまけ:最近気になってる錆の話

先日、ステンレスのシンクに濡れた缶詰を置いていたら、ステンレスが錆びてしまいました(「stain less」で「錆びない」という意味だというのに)。これは異種金属接触腐食と呼ばれる現象によってできた錆です。水の中に鉄釘を入れておいてできる錆よりも、もう少しメカニズムが複雑です。

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ステンレスの錆の落とし方をインターネットで調べると「重曹で落ちる」とか「酢で落ちる」とか様々な情報が出てきますが、錆に対する科学的説明が誤っているサイトも散見され、どうも胡散臭いのです。本当のところは一体何が効果的なんでしょうかね。これって自由研究のテーマになりませんか?

 

続編を書きました(2021-08-22)

fffw2.hateblo.jp