『猫飼好五十三疋』のハンカチを眺めていたときに、とある発見をしたのでご報告。
『猫飼好五十三疋』(みょうかいこうごじゅうさんびき)は江戸時代の猫好き歌川国芳が1848年に描いた『東海道五十三次』のパロディー作品で、東海道の宿場名になぞらえた猫ダジャレ五十五連発*1がちょっと面白いです。
日本橋:二本だし (鰹節2本)
浜松:はなあつ(鼻が熱い)
そして、私の暮らす「草津」は…
こたつ
…ウーン
ダジャレの出来はさて置いて、私が違和感を覚えたのは猫の位置。
こたつの中 じゃなくて こたつの上 で丸くなってる!
江戸時代の他の絵画も見てみましたが…
喜多川歌麿『絵本四季花 下』より
やっぱり、こたつの上で丸くなってる。
童謡『雪』に「犬は喜び庭駆け回り 猫はこたつで丸くなる」という有名な歌詞がありますが、もしかしてあの猫もこたつの上で丸くなっていたのでしょうか?(寒くないのかな)
『雪』の初出は1911年の『尋常小學唱歌 第二學年用』。当時の教科書の解説書を見つけたので、紐解いてみました。
雪やこんこ霰やこんこ。降つても降つてもまた降りやまぬ。毎日々々降りつゞいて居る。この雪の降るのに犬は喜んで庭を駈けまはつて居る。猫は火燵の上で丸くなつてゐる。如何にも寒さうな恰好してゐるのである。
(1913年『小学校各教科用書に見えたる韻文の摸写的詳解』p.493より)
いました、こたつの上です!
今までずっと猫はこたつの中に潜り込んでるものだと思ってました。
調べてみたところ、この100年で猫の習性が変わったなんていうことはなく、変わったのはこたつの方でした。現在のような電気ごたつが普及したのは1950年代。それまでのこたつは、炭火の火鉢や囲炉裏の上に木製の櫓を組んで布団をかけたもので、天板はありませんでした。それゆえ暖められたふかふかの布団の上で猫は丸くなっていたんですね。
ちなみに、現代の猫は電気ごたつの中に潜り込み、丸くはならず、伸びます。
Google画像検索で「猫 こたつ」と調べてみると、だらしなく伸びた猫たちの写真が出てきて癒やされます。猫が丸まるのは表面積を小さくして熱の放散を抑えるためなので、電気ごたつの中では暖かすぎてむしろ体を広げて熱を逃がすようです。