明治時代の地租改正のときに各府県で土地調査が行われ、その際に土地一筆ごとに番号がつけられました。150年経った今もなお使われ続けているその番号こそが、地順番号、略して「地番」です。
地番の振り方には2つのパターンがあります。
1. 一村通し(大字通し)
大字(旧藩政村)単位で1から順に地番を振る方法です。3桁や4桁の大きな地番になることもしばしば。小字*1がなくても地番だけで土地を特定できるので、一村通しの地域では小字が省略され、住民に小字の存在すら知られていないことが多いです。
一村通しの例:埼玉県 上尾市 平方 453-1
登記上の正式な住所は「埼玉県 上尾市 平方 字横町 453-1」ですが、大字単位で地番を振る地域なので、小字が必要なく、大字「平方」の後の小字が省略されています。大字「平方」には「横町」「石井戸」「三ツ塚」「南」などの小字が20個程度ありますが、普通の地図には小字が載っておらず調べるのも一苦労*2です。
2. 字別付番(字限り付番*3)
大字の中の小字ごとに1から順に地番を振る方法です。その特性上、小字を省略すると土地を特定できなくなるので、字別付番の地域では小字が現役で使われていることが多いです。
字別付番の例:愛知県 北名古屋市 熊之庄 十二社 66-3
大字「熊之庄」の中には「十二社*4」「射矢重」「牛流」「城ノ屋敷」などの小字が20個程度あります。各小字内で地番を1から順に振っているため、小字を省略して「北名古屋市 熊之庄 66-3」のようには表せません。
地番の振り方マップ(一村通し or 字別付番)
一村通しと字別付番について知ると「私の住んでいる地域の地番はどっちの方式?」と気になってきます。そこで、一村通しの地域と字別付番の地域を調べて、日本地図にまとめてみました。青が一村通し、赤が字別付番、黄が両者混在です。
大多数が一村通しを採用しており、東北・北陸地方や愛知県などの一部だけが字別付番を採用しています。
- 大蔵省『府県地租改正紀要』に記載されている旧府県別の「地押丈量ノ概況」を参考にして、上図を作成しました。
- 山形県は旧鶴岡県が字別付番、それ以外が一村通しです。
- 富山県は旧新川郡が字別・一村通し混在で、それ以外が一村通しです。
- 京都府は旧京都府が字別付番、旧豊岡県が一村通しです。
- 山梨県と山口県については、地番の振り方に関する記載がなかったので、今尾恵介氏の『番地の謎』を参考にしました。*5
参考文献
- 大蔵省『府県地租改正紀要』(1882年)
- 桑原公徳「『府県地租改正紀要』にみる地図と土地丈量」(1985年)
- 今尾恵介『番地の謎』(2017年)
*1:「小字って何だっけ?」という方は先にこちらの記事をどうぞ。 fffw2.hateblo.jp
*2:埼玉県上尾市平方453-1の小字はGoogle検索を駆使して調べました。"上尾市平方字"というキーワードで完全一致検索し、東京都地域防災計画の資料で「埼玉県上尾市大字平方字横町433番の5地先」、老人ホーム永寿荘の新築工事資料で「埼玉県上尾市大字平方字横町498外」という記載を見つけ、433番と498番の小字が「字横町」であることから、その間に含まれる453番も「字横町」であると判断しました。一村通しの地域では小字をググって特定できるほうが稀なぐらいです。確実に知りたい人は法務局に行きましょう。
*3:「字限り」と書いて「あざきり」と読みます。
*4:北名古屋市熊之庄「十二社」は「じゅうにそ」と読みます。十二所神社関連の小字だと思われます。
*5:今尾恵介氏『番地の謎』p.77「佐藤甚次郎氏の『神奈川県の明治期地籍図』に掲載された一覧表によれば、「字別付番」の県(旧県)は、少数派であるが青森県、岩手県、秋田県の一部、宮城県、山形県の一部(旧・鶴岡県)、石川県、福井県、愛知県の一部、愛媛県(現・香川県部分の大規模村)、徳島県(山村の一部)、熊本県の一部で採用され、それが基本的には現在に受け継がれている。」